「障害者を残して迎える死」障害者の親の終活を考える


記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦

記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦
「120歳くらいまで元気で生きて、障がいのある我が子達の死を看取ってから死にたい」
冗談に聞こえるかもしれませんが、障がいのある我が子達を育てながら時々本当にそんな風に考える事があります。私もひとりの親として、我が子達の事をいつまでも心配し過ぎてしまう。
しかしこれは、どこの親にもある思いで、生物学上の問題なのかもしれません
障がいある子の親は「自分の死」について考える時に、次のことを並行して考える必要があります。
- 自分の人生の終活
- 親亡き後の、障がいある子の人生の事
- 我が子の終活
考える事が多すぎますが、ひとりで抱え込んで考えるものではありません。
今回は、その中でも「人生の終わり」=終活について考えていくサポートさせて下さい。
障がいのある子の親が「自分自身の身辺整理」として、生前にしておくべき事をお伝えしていきたいと思います。
竹内
記事のもくじ
「障害者を残して迎える死」障害者の親の終活を考える
以前、『障害を持つ子の親にとってのエンディングノート』について書きました。
障害のある子の為に残すエンディングノートは、「障がいのある子の今後の生活を助けるもの」となります。
では、自分の事は?
自分自身の終活に向けての身辺整理はどうすればいいのだろう?
親亡き後の障がいある我が子の事と同じくらい心配になりますよね。
そんな心配をすこしでも減らしていく為に「障害者の親の終活」について、次の2つをお伝えしていきたいと思います。
- 自分の終活の事・お墓の事
- 障がいある子の兄弟や血縁者の事
さっそく、説明していきたいと思います。
竹内
自分の終活・お墓、葬儀、介護、生前整理について
我が子に障がいがあれば、自分の葬儀を手配していくことやお墓を見てもらうことは難しくなります。
仮にきょうだい児(※1)がいたとしても、障がいのある兄弟の世話をしながら、葬儀やお墓の世話を全て任せるのは負担が大きすぎますよね。
※1:きょうだい児とは
障がいのある子の兄弟姉妹のことを きょうだい児と言います。
きょうだい児の子達には「親が障がいのある兄弟の世話で忙しくて甘える事が出来ない」「学校で障がいのある兄弟の事で悩みがあったり、いじめにあったりしている」など、独特の悩みがある為に、障がい者とは別のタイプの支援を必要としている子供たちの事です。
自分の終活
以前紹介した「障がいある子の為のエンディングノート」とは別に、自分の終活に向けてのエンディングノートを作っておきましょう。
1冊にまとめてはダメなの?
と思うかもしれません。
しかし、みんなで共有する我が子の為のエンディングノートには、公表すべきでない事が多々あります。
たとえば「金融資産の把握」や「印鑑・通帳の保管場所」など。
そうした貴重品管理のことなどを、万が一の時の為に誰かに託せるものを作っておきましょう。
書き残す内容の参考例としては、こうしたものがあります。
・金融資産の把握、印鑑・通帳の保管場所
・所有不動産
・介護・医療等の希望
・ご自身が危篤状態や他界した際に連絡を取る方
・葬儀やお墓の事
ご自身が、健康なうちにエンディングノートを作製しておきましょう。
エンディングノートについては、こちらに詳しくまとめてあります。
→エンディングノートと遺言書7つの違い!内容や書き方、費用、法的効力などについて
ざっくりと、エンディングノートを書くことの意味について知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。
お墓について
そして、自身のエンディングノートに記載する内容として、お墓のことがあります。
我が子に障がいがあったり、子孫がいない方々の為に「永代供養」というものがあるのはご存知でしょうか?
永代供養(えいだいくよう)とは、ひとつの供養の在り方です。今まで一般的には、お墓は故人の子孫や血縁者が守ってきましたが、家族に代わり、永代にわたって霊園やお寺が供養してくれる比較的新しいスタイルの供養方法ともいえます。
永代供養については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
→永代供養墓とは?特徴やメリットなどから自分にあったお墓選びを考えよう
ひとつの参考となれば、幸いです。
竹内
葬儀について
続いて、葬儀のことにも触れておきましょう。
葬儀とひとくちにいっても、近年は多種多様な形があります。障がいを持つ子が、親亡き後に葬儀の準備をするのは難しいかと思います。
そこで大切なのが、生前予約。生前予約については以下の記事で詳しく解説しています。
→『生前予約』葬儀の準備は生きている時から考えよう!終活とお葬式について
葬儀の種類と値段の相場は以下の通りです。
- 一般葬儀(相場目安100万円~200万円)
皆さんがイメージされる一般的な葬儀です。遺族や親族以外にも多くの方が参列する事が出来ます。
- 家族葬・密葬(相場目安60万円~150万円)
家族の在り方が小人数(核家族)や高齢化社会による変化に伴い増加の一途を辿っている葬儀の在り方です。
遺族親族・親しい人を含めて10人~30人で執り行われる事が多い葬儀です。
- 一日葬(相場目安100万円~200万円)
昔からよくある葬儀は、通夜と葬儀は日程を分けて行いますが、一日葬は通夜を物凄く簡単に執り行い終える形か、または行わない形をとります。簡単に思われがちですが、実際には準備なども忙しくなり、費用も一般的な葬儀と変わりません。
- 直葬(相場目安50万円程度まで)
通夜や葬儀、告別式を行わず、火葬だけで終える葬儀です。
ご家族がそうした選択をとられる場合もありますし、病院などのから火葬場まで直接移動して行う場合もあります。
介護について
介護についても考えておく必要があります。
人間は年齢を重ねると不安などの理由から、選択をするという事が難しくなります。
例えば、サービスを受けられる状態でも、介護を受ける事への抵抗感が出たり費用の事が気になったりして、介護を受ける事を躊躇してしまう時もあります。
そうした理由から、心身が健康なうちに情報を得て介護について考えておきましょう。
大きく分けて、「居宅サービス」と「施設サービス」の2つがあります。
居宅サービスとは、自宅で過ごしながら福祉にサポートしてもらうサービスの事です。
自宅での過ごしを中心にした、誰かにサポートに来てもらうというイメージでいいでしょう。
自宅を離れたくないという人に、適したものだと思います。
詳しくは、こちらの記事もあわせてご覧ください。
施設サービスとは、施設に入居して24時間の介護を受けられるサービスのことです。
自宅で過ごすことが難しくなってしまった人や、24時間介護が必要になってしまった人向けのサービスです。身内の人に迷惑をかけたくない思いからこちらを望まれる方も、近年は増えているそうです。
詳しくは、こちらの記事もあわせてご覧ください。
いずれにしても、介護サービスを受ける為には
申請→要介護認定→ケアプランの作成→介護依頼先の選択と、段階を踏んで進めていきますよ。
竹内
介護サービスはとても種類が多く、個人だけで選ぶことはとても大変です。しかし、知識だけでも知っておけば、自分がどうした方向へ進んで行きたいのかを書き残しておくことが出来ます。
そうすれば、ケアマネジャーからの提案にも繋がりやすくなりますし、適切な選択ができるようになるでしょう。
生前整理について
生前整理とは、自分がなくなる前に身辺の整理を行う事です。
近年、自分亡き後に遺族に迷惑をかけない様にと生前整理に注目が集まっていますが、自分の子どもに障がいがあった場合は遺品整理をより多く行っておく必要が出てきます。
遺族や残された人に迷惑がかからない様にしていくのが、生前整理の一番の目的です。
生前整理については、情報を多くまとめていますので、こちらもあわせてご覧ください。
障がいある子の兄弟や血縁者の終活
自分の終活や障がいを抱えた子の終活以外にも「障がいある子の兄弟や血縁者の事」も、考えておいてほしいと思っています。
なぜなら、障がいの話になると「障がいのある子とその親」の困り事ばかりに話がもっていかれる事が多い。
しかし、障がい者本人の存在の陰に隠れているきょうだい児達(または血縁者)は、障がいを抱える子の親の他界後に一気に責任の目を向けられがちです。
親自身は、きょうだい児や血縁者には自分の人生を生きて欲しいと思っている場合が多いし、自分が背負ってきた責任という負担を掛けるべきではないと思っている人も多いのも現実。
しかし、その思いが支援者や支援機関に引き継がれていません。
生前にそうした事を伝えておいたり、何かそうした気持ちを形として残しておかなければ、周囲はきょうだい児や血縁者が最終責任や面倒を見てくれるとつい期待してしまいます。
でも実際のところ、きょうだい児や血縁者は障がいについてほとんど知らない事が多いのです。
親が世話をしてきた障がい者の支援方法を知らないし、薬や主治医の名前すら知らないこともあります。
親が亡くなったあと家族として(血縁者として)、世話や責任と言う名の負担が誰かに一点集中しない様にしておいてあげることも忘れないでおいてほしいことのひとつです。
生活費の送金や手続き、医療費の支払いなどのバックアップ支援「任意後見制度」について
任意後見制度はご存知でしょうか?
「任意後見制度」とは、判断能力のある今のうちから、将来「誰に、どのようなサポートをしてもらうか』を決めて、公正証書によって「任意後見契約」を結ぶことをいいます。
任意後見契約は、公正証書を作成しただけでは始まらず、本人の判断能力が低下し、家庭裁判所がそれを認め、監督する任意後見監督人を選出した時から始まります。
任意後見制度とは、障がいある我が子への財産を信頼できる人(血の繋がりがある人や、任せれると判断した人)に管理を任せる事ができる制度をいいます。
竹内
親が事前にこの制度を利用しておけば、自身が他界したり認知症となった場合に安心です。
理由は、障がいを抱える我が子への資産を、自分が任せたいと決めた人に任せる事できる制度だからです。
万が一「任意後見制度」を利用していない場合は、「法廷後見制度」が適用されます。
法廷後見制度とは…
自身の財産や遺産に対し判断が不十分な場合、申し立てにより家庭裁判所により選任された後見人が本人の代わりに遺産・財産・権利を守っていく法的な支援制度。
法廷後見制度の際は、後見人を家庭裁判所が決定する為に、信頼できる人を指定する事は出来ません。
任意後見人制度と似ている様ですが、法廷後見人制度は費用が高いというデメリットがあります。
家庭裁判所が決めた法廷後見人には、弁護士、司法書士、社会福祉士などの見ず知らずの方が選任されます。
その際に、毎年24万円~72万円と言った多額の費用が支払う必要があります。更には、自由に親の残してくれた財産を管理できなくなるという規則もあります。
私は、障がいのある子を育てる親として思う事があります。
「お子さんの将来をどんなふうに考えていますか?」「どんなふうに育ってほしいですか?」と問われる事が多いのですが、たとえ障害があろうとも「この子がどんなふうに生きていきたいのか」「この子が、どの様な生き方をしたいのか」、そうした障がいを抱えた本人の気持ちを優先する事も忘れないで欲しいと。
今後、私の他界後に障がいのある子が好きな事を見つけた時や、何か生き甲斐を見つけた時にこそ余剰分のお金を利用して自分の人生を満喫して欲しいと思っています。
もちろん、その為には支援者の方々に意志や気持ちを汲み取ってもらう必要もあります。購入だって手伝ってもらう必要があるでしょう。
そうした時に、
- 信頼できる人に、お金を預けておきたい
- 価値ある出来事に対しお金を使用して生きて欲しい
- 管理されているが為に、お金が引き出せないなんてことがないようにしておきたい
そんな風に思っています。
任意後見契約については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
時代の流れや環境によって制度も変わっていくので、気になったらその都度、支援機関や自治体に確認すると情報を得ることが出来ますよ。
まとめ:「障害者を残して迎える死」障害者の親の終活を考える
先の事を考え出すと、考えておくべきタスクの多さに頭を抱えてしまいますよね。
障害者の親として「自分の終活を考えるポイント」をまとめてみます。
- 障がいを抱える我が子の為のエンディングノート以外に、自分自身の事を伝えるエンディングノートを残しておく
- その中でも、お墓の事は必要であれば「永代供養」について考えておく(手続きをしておく)
- 他界後の、きょうだい児や血縁者の事も考えておく
- 「任意後見制度」についても情報を得ておく
本当に、親だけで考えるには難しい事や向き合いたくないこともあり、責任が大きすぎますよね。
しかし大切なのは、
- 一緒に考えてくれる人や一緒に生きようと思ってくれる支援者や支援機関を作るために、情報を得る事
- そして、与えられた情報だけに頼るのではなく「子どもにもっとふさわしい支援はないか」と、親として行動していく事や、支援者といい関係を作り上げていく事
ひとりで悩むべきものではありませんし、助けてくれる「制度」や「支援」が必ずあります。


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