障害者が抱える将来の悩みや不安「障害者就労」から仕事について考える


記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦

記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦
障がいを抱える子の親として、子どもの将来を考えた時にどうしても気になるのは自立のこと。
自立を豊かにするものとして「就労」があります。
障がい者の親の中には「労働できるか心配」とか、中には「可哀そうに思える」という声もあります。そんな親心とはうらはらに、成人した障がい者の中には、する事を自分で見つけれず、余暇時間があり過ぎるという状況に不安や疲労を感じる方も多いようです。
「好きに過ごしていいからね」と言われても、その状況が辛くなるような方もいるという事です。
身体の障がいであっても、精神の障がいであっても無理のない範囲で社会の役に立っていると感じさせてあげる事は大切な事ではないでしょうか。今日は、障がいを抱える人の仕事についてお伝えしていきたいと思います。
記事のもくじ
障害者の将来「障害者就労」について考える
障がいを抱える人にとって、仕事を探すことも勤務を続けることも一般の人に比べてストレスが多いと言われています。
しかし、障がい者の就労人口は毎年増加しています。
実際に障がいを抱えながら就労している人の調査結果を、厚生労働省のホームページより調べてきました。
<民間企業>(法定雇用率2.2%)
○雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新。
○法定雇用率達成企業の割合は48.0%(対前年比2.1ポイント上昇)
〈公的機関〉(同2.5%、都道府県などの教育委員会は2.4%)
○雇用障害者数はいずれも対前年で上回る。
〈独立行政法人など〉(同2.5%)※( )は前年の値
○雇用障害者数及び実雇用率のいずれも対前年で上回る。
・雇用障害者数 1万1,612.0人(1万1,010.0人)、実雇用率 2.63%(2.54%)
民間企業、公的機関、独立行政法人の全てで障がいを抱えた人の就労が増加しています。その背景には、障がい者も仕事を行いやすい環境にする為に、法律や制度が新たに増えた事が理由のひとつとしてあります。
企業側においても、障がい者の就労をサポートする体制が増加していることから、障がいを抱えた人を受け入れやすくなっています。だからと言って障害を抱えた我が子が働くこととなれば、不安が募りますよね。
次は、そうした不安を少しでも取り払ってもらうために障がい者の就労支援制度を知ってもらい今後の計画に役立てていただきたいと思います。
そして、最後に障がい者特有の仕事の悩みや、そうした問題への対策をお伝えしていきたいと思います。ぜひ、就労を考える際にお役立てください。
障害者の方の「就労支援制度」~福祉事業所での就労~
就労支援とは、国が行っている雇用政策のひとつです。
障がい者にかぎらず、疾患や貧困などの理由で就労にサポートを必要としている人を対象に「就労選び・就労探し・就労の継続」を支援する制度の事です。
続いて、障がい者にとっての就労支援制度を解説していきたいと思います。
【就労前】就労移行支援
就労移行支援とは、就労を希望する障がい者のための支援です。
就労をめざしている障がい者(65歳未満)を対象として、就労に必要なスキルを身につけていくための福祉サービスです。
就労したいという意欲があれば、障害者手帳の有無に関わらず利用する事ができますが、2年間の間という利用期限が設けられています。実際に、こんな事が行われています。
- 就労に向けたトレーニングを積む事ができる
- 自分に合った職場を支援者と相談しながら決める事ができる
- 就労の活動についてサポートが受けられる
欠席を少なく継続的に「就労移行支援」に通所したという実績があれば、就職活動の際の評価にもつながります。
【就労時】就労継続支援
就労継続支援もまた、障がい者の就労をサポートする福祉サービスのひとつです。
障がいを抱えていれば本人の努力とは別に、就労の際に体調が安定しない場合や精神面が不安定になる事も頻繁に起こる可能性が高いです。そうした、民間企業での就労が困難な障がい者を対象として、働く場を提供するサービスです。
就労継続支援には「A型」と「B型」の2つがあり、主な違いはこちらの2つになります。
A型 | B型 | |
雇用契約を定型の有無 | 雇用契約有り | 雇用契約無し |
対象年齢 | 原則18~65歳未満 | 年齢制限無し |
どちらの場合も、福祉事業所での就労となます。仕事内容は「就労移行支援」の時や支援者との相談により、本人のスキルや希望に沿って決めていきます。
いずれも福祉事業所で働くことになり、その仕事内容は事業所によってさまざまです。
仕事内容は一概には言えませんが、少し例を挙げておきます。
就労継続支援A型
- パン工房の軽作業
- 配送の手伝い
- 農作業手伝い など
事業所により業務内容はさまざまですが、本人の気持ちに沿って提案されていきます。そして、雇用契約を結び原則最低賃金以上の給料を稼ぐ事が可能です。
就労継続支援B型
- ネジ締め
- 袋詰め
- タグづくり などの軽作業
雇用契約を結ばないため、軽作業に対する「工賃」が支給されます。
工賃は、国で定められている最低賃金を下回る事が多いですが、障がいをかかえていて作業の継続が難しいかたにとっては自分のペースで就労ができるものとなっています。
契約を結ばない理由は、体調や作業量などの面で一定の労働が困難な人を対象としたサービスとなっています。
【就労後】就労定着支援
障がい者の方の就職後の職場への定着支援を行うものです。
これまでも、事業所などが障がい者の就職後の支援を行う場合もありましたが、制度の改正により独立したサービスとなりました。その理由は、働く障がい者の方が増えてきた事により、就職後の問題についてサポートすべき需要が急速に高まってきたからです。
具体的に就労定着支援では、働いている障がい者が、働きやすくなるようにサポートをしてくれます。
- 休憩時間に何をしていいのか困っている
- 時間配分が上手くいかず、遅刻が続いている
- 職場の人とのコミュニケーションに困っている
- 給料の管理が出来ない
こんなとき、障がいのある人がひとりで問題をかかえていれば後に本人への大きな負担となります。
そうならない為に就労定着支援事業所の職員が定期的に、就労事業所や医療機関と連携をとって問題解決に向けて支援を行っていきます。もちろん、障がい者本人とも問題を解決していく為に面談を通じてアドバイスをしたり相談を受けたりします。
まだ、開始して間もない制度の為に、自治体によって体制が異なる場合があります。詳しくは、お住まいの地域の事業所や自治体の役所・福祉課で話を聞く事ができます。
障害者の方の将来〜一般企業での就労
前述した、福祉事業所内での就労や就労移行支援ではなく、一般企業の障害者枠での就労もあります。
障害者枠での就労は、障害者手帳を持っている方を対象としたものです。
しかし、障がいを抱えた成人が一般雇用で就労していく場合でも配慮や支援が必要となってくるので、家族や支援者みんなで一緒に話し合う必要があります。
すこし詳しく解説していきたいと思います。
一般雇用での就労する場合
一般雇用枠での就労を考えた際には、応募先(求人)の選択肢が広がります。
しかし、デメリットとして他の職員や同僚と同等の雇用立場となるので、障がいがあることに対して配慮を請けられない場合がほとんどです。
もちろん、上司や同僚に相談などはできますが、配慮という面ではどうなるのかは確認が必要となってきます。
障害者雇用枠での就労をする場合
一般企業や公的な職場の障害者雇用枠で就労をする場合は、手帳を保持している事が条件となります。そして、企業側にも自分自身の障がいや特性、体調についてを報告した上での就労となる場合が多いようです。
職場にもよりますが、障がいを抱えた人だけが就労できる場を設けているようなケースもあります。たとえ、そうした場がなくても障がいによっての配慮を考慮してもらいながらの就労となります。
しかし、やはり求人は少なく選択肢も限られてきます。
障がい者の就労とは、障がい者本人とその家族だけで決めていけるものではありません。
就労する企業や事業所、そして本人とその家族や今まで関わってきた医療関係者や支援者で何度も話し合いを重ねて決めていく事が重要になってきます。
障害者の方が将来仕事をする上で抱えがちな悩みや不安
たとえ、障がいを抱えていないとしても、働くという事は悩みや困り事がつきものです。しかし、障がいを抱えた方が働く場合は、その障がいによる特別な悩みが出てくる場合が多いようです。
それらの悩みの例をいくつか挙げておきたいと思いますので「我が子のもそうした悩みが想定される」と思われる場合は、改善していける働き方も事前に考えておく必要があります。
不安になり過ぎる事が問題となる
障がいを抱えた人は、その症状によって不安を抱えてしまう場が、定型発達の人と比べてかなり多いです。
そして、そうした不安が引き金となり、業務上だけにとどまらず日常生活にまで影響を及ぼす場合もあるので、支援する側が配慮する必要があります。1つケースを挙げておきます。
仕事に遅刻しない様に、朝起きられるかどうか不安になったAさんは心配でなかなか就寝出来ない日が続いた。
その結果、集中力が低下し業務上のミスが多発した。
職場の人にミスがある事を指摘されただけなのだが、強く叱責を受けたような気持ちになってしまい心身のバランスが崩れてしまう。
こうしたケースも少なくないようです。
事前に、本人にこうした特性があることがわかっていれば「こうした事が起こった場合にどうすればいいのか」を話し合える職場環境を選んだり提供できるようにしておく必要があります。
本人や周囲もそうしたケースを配慮した上し、考えていく事で大きな問題となる事を防ぐことが出来ます。
職場の人間関係が問題となる
人間関係のトラブルもどんな人にもありうる事なのですが、障がいを抱える人にとってはこれもまた業務上に支障をきたす引き金となるようです。例えば障がいによる特性で、一般の人には理解できないような不安を抱える人も多いようです。
- 人の顔が覚えられない為に、挨拶をするのも声をかける事さえも不安になる。
- 言葉だけでの説明では理解がしづらい。しかしそうした自分の気持ちを上手く伝える事が出来ない。
一般の人からは分かり辛い悩みの積み重ねにより、職場に馴染めなくなってしまう事が増えてしまう事もよくあります。職場で働くということは、人と人との関りが働きやすさの大きな要素となってきます。
そうした気持ちを汲み取ってくれる上司や同僚の方がいる場合もあれば、残念ながら理解するという事に非協力的な場合もあります。
理解して貰える場合はいいですが、もしそうでない場合は支援者や家族が早めに障がい者本人の困り感に気付き、働く場を今一度考え直す事も重要になるでしょう。
色んな問題を引き金に体調が崩れやすくなっていく
一般的に仕事を休むほどの体調と言えば、風邪や骨折などと言った病気や怪我です。しかし、障がいを抱えていると想定外の事で休むはめになってしまいます。例えば、前述した職場での不安感や馴染めない気持ちから精神が崩れていく場合もあります。
それ以外にも、身体の特性により通勤だけでかなりの体力を消耗してしまい、職場につく頃にはかなり疲労している事もあります。
それに、五感に敏感さを持つ人達であれば、情報量の多さや日常生活音にも疲労を感じすぎてしまう場合も多いようです。そうした事が事前に分かっていながら配慮をしておいたとしても、想定外の事が引き金となる場合もあります。
本人が、体調の不調に気付き訴える事が出来ればいいのですが、自分でも気が付いていない場合もあるのでやはり支援者が定期的に体調を気にかけてあげる必要があります。
どういった働き方ならば障がいの特性を緩和しつつ働いていけるのかを想定・検討していく必要があります。
『親の立場から』障害者にとっての就労について思う事
どんな人にとっても初めての就職というのは「晴れの姿」でもありますが、リアルの世界への旅立ちでもあります。お金を稼ぐために自分の足で社会に出てみると、養ってもらっていた頃には見えてこなかった生き方が一気に目の前に広がり始めます。
嬉しい事もあれば、残念ながら今までに感じた事の無いような虚無感や辛さを感じる事もあります。
周囲は、そうした虚無感や辛さを乗り越える事が社会人として立派であると考えようとさせますが、私は違うと思っています。
障がいのある方たちは、特別な生き方を抱えて生まれてきたことにより「福祉」という日本の経済を回しています。
そして、障がいを抱える方たち抱えている問題があるからこそ、支援する側も問題を改善するという仕事が生まれる。
その仕事は、全ての人が円滑に暮らしていける世の中をよくする動きに値します。そう考えると、世の中に問題があるからこそ、時代がいい方へと移り変わっていくのだなと気付くようになりました。
だから私は、障がいを抱えた方たちが抱える問題とは、軽視してはならないものだと思っています。
障がい者が働くという事は、辛い事を飲み込ませて労働させていく事ではありません。社会に役立っている価値を感じながら日々、心地よく通うべき場所があればいいのではないかと思う時もあります。
そして、彼らが仕事をもっとしてみたいと思えば日本の経済はもっと大きく飛躍してくのではないか、そんな風に思えてなりません。
「働き方を強要するのではなく、働く事をサポートする」これが、障がい者への就労の支援だと思っています。
まとめ:障害者が抱える将来の悩みや不安「障害者就労」から仕事について考える
今や日本だけをみても地球規模で見ても、生き方や働き方の幅は年々広がっています。障がいを抱える人の働き方も、それらと比べると緩やかではありますが広っていることを今回お伝えしてきました。
障がい者の親として、将来の悩みのひとつである「障害者就労」は今のところ
- 就労移行支援
- 就労継続支援
- 就労定着支援
- 一般企業の障害者枠
などがあり、もちろん障がいの特性や能力によっては一般就労も可能です。
最後の就労について相談できる場も紹介しておきます。
- ハローワーク
- 障害者就業・生活支援センター
近年はネット上にも障害者雇用に特化したサイトも出てきています。いずれにしても、お住まいの自治体の情報を得つつ先の事を考えて行きましょう。


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竹内
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