【親亡き後の障害者】「私が死んだら」を考えて今あなたができる事


記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦

記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦
- 障がいを抱える子は私が死んだら、どうやって生きるのだろう?
- 親として生前に出来る事は、何があるのだろう?
- お金や住むところはどうなるのだろう?
と、自分の子どもに障がいがあれば、自分が死んだ後の事が不安になってしまいますよね。
障がいを抱えた人の家での暮らしを一番よく知っているのは、その親になります。
たくさんの支援や福祉、医療に手助けを受けながら育ってきたとしても、支援者が知っているのは集団の中での障害者の事。家での暮らしの事はよく知らない。だから、親亡き後の障害者の事をかんがえるのならば、親が支援者に声をかけて考えて行かなければならない事があります。
今回は、「障がい者にとって、親亡き後」の事を考えた、今できる事をお伝えしていこうと思います。
【親亡き後の障害者】「私が死んだら」を考えて今あなたができる事
障がいを抱えている子の親として、自分が死んだ後の事を考えていると胸が苦しくなります。いつか訪れる将来を、親として「今」できることはしておきたいですよね。そしてその将来はいつ訪れるかわかりません。10年後30年後かもしれないし、もしかすると明日かもしれません。
具体的に何をしたらいいのかわからないわ…
最低でも考えておくべきことが3つあります。
- 生活資金
- 生活場所
- つながり
この3つを考えていくには、親であるあなたの力が必ず必要になってきます。
なかなか踏み切る事の難しい課題だとはおもいます。しかし、みなさんにとっての「自分の亡き後の障がいを抱える我が子の事」を考えていくきっかけやヒントになれば幸いです。
「親亡き後の障害者」生活資金について
まず、お金のことを考えて行きましょう。
その為にポイントになってくるのが、この3つです。
- 免除されるお金
- 受け取れるお金
- 親として残せるお金
それぞれに、説明していきたいと思います。
免除されるお金
まず、ひとつ目。
免除されるものには「自立支援医療」と「障害者手帳による控除・免除」があります。
自立支援医療とは
高桑
自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。
要は、身体や精神に障がいを抱えている方で、通院や継続的な治療が必要な場合にはその医療的負担が1割になる制度です。
対象になる方は、精神障がい、身体障がいの両方の方が含まれます。
- 精神通院医療:精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者
- 更生医療:身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上)
- 育成医療:身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満)
医療負担が増えてしまいがちな障がいのある方はぜひ利用してもらいたいですね。
障害者手帳による控除・免除とは
高桑
障害者手帳はご存知ですか?障害者手帳を所持する事でたくさんの控除や免除を受ける事が出来ます。手帳は障がいの分類によって以下のように分けられています。
発達や精神の障がいを抱えている人は「精神障害者保健福祉手帳」
身体に障がいがある方は「身体障害者手帳」
手帳を持っていることで、受けられるサービス(割引、応募、加算、助成など)もあります。以下で、受けられるサービスについてまとめてみました。
高桑
『共通で受けられる』サービス
- 一部直接税の減免
- 利子所得の非課税
- 健康保険適用時の医療費の助成
- 障害者求人への応募
- 生活保護の障害者加算 など
『手帳の種類や等級によって変わる』受けられるサービス
- 施設の入場料やNHKの受信料の減免
- 公営住宅の優先入
- 居有料道路の割引
- 自動車に関わる税金の減免など
沢山のサービスを受ける事も出来ます。
手帳は、持っていてかなりのメリットがあるようなのでぜひ取得しておきたいですね。
竹内
受け取れるお金
続いて、ふたつ目。
受け取れるお金には「障害年金」があります。
障害年金は、日本年金機構が国から委託を受けて運営している制度なので日本年金機構のホームページの説明を紹介します。
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。
なお、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。
また、障害年金を受け取るには、年金の納付状況などの条件が設けられています。
- 障がい診断の初診日が二十歳を超えていて、国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」
- 厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」
を受け取れます。
※申請も成人後になります。
親として残せるお金
最後、みっつ目。
親として我が子へのお金の残し方もいくつか方法があります。
- 預貯金
- 生命保険
- 投資信託・信託
説明していきましょう。
「預貯金」は、ご存知の通り銀行での貯金です。そして、生命保険は親が死んだ後に受け取り相続人を子供にしておくことで支払われるもの。
このふたつは、知名度が高いですよね。
竹内
そして、あまり知られていませんが障がいを抱える子を持つ親の方に「特定贈与信託」という制度があることを知っておいてほしいと思います。
特定贈与信託
特定贈与信託とは、特別障がい者の親亡き後に、障がいを抱える子どもの生活を支援する為のものです。
普通は血のつながりのある親子でも、投資などで得たお金の贈与には「贈与税」がかなりかかってきますが、それらが全て非課税になります。
それ以外にも定期的にお金が払い出されるので、親亡き後の障害者の生活を支えていくものとなります。
高桑
特定贈与信託については以下の記事で詳しく解説しています。
「親亡き後の障害者」生活場所について
続いては「生活場所」。個人的には、お金も大切ですが生活場所はもっと大切だと考えています。
障がいの有無にかかわらず、介護なども含め自分が弱者と呼ばれる人になった時に大切なのは「お金より誰かの助け」です。
子供に残せるものを考える時、すぐに「お金」が浮かんでしまうかもしれませんが、障がいを抱える子にとっては「お金」よりも「誰かの手や心地よく住める場所」の方がよほど大切なのではないでしょうか。
今のところ、障がいを抱える人が親と離れて暮らしていく場所としては、こうした場所が公的に準備されています。
- 短期入所(ショートステイ)
- 共同生活援助(グループホーム)
- 施設入所支援
- 精神障害者居宅介護等制度(ホームヘルプサービス)
これ以外にも、障がいの程度が軽い場合には福祉のサポートを受けながら一人暮らしを続ける人もいます。
それに、日中は就労支援サービスを受けながら働いたり、給料はでませんが生活訓練を受けながら就労や自立に向けてのサポートを受ける事も出来ます。
詳しく知りたい方は、今住んでいる自治体の福祉課や相談支援事業所に行けば詳しい情報と、その為に今できる事を教えてもらえるはずです。
「親亡き後の障害者」つながりについて
「つながり」は障がいを抱える人たちにとって、最も大切なことです。
親亡き後の障がい者の「生活資金や生活場所」は死活問題で、とても大切な事。
そして、それ以上に彼らが少しでも多く自立していくために、多くの場所と繋がりを持てるようにしておきましょう。
繋がって自立するとは?
「繋がる事」と「自立」は相反する言葉なのに「繋がって自立」とはおかしいなあと思いますよね。
しかし、自分だけの頑張りではどうする事も出来ない事があるのが障がいを抱える人たちです。彼らにとって、誰かの力を借りながら生きていく事は当たり前の事なんですよね。
もし困った事があった時に、ひとつしかない繋がり先に断られるという事は「絶望感」を産む事になりかねません。
ここがダメなら、次はこっちと「つながり」が多ければ多い程、彼らは助けを借りながら自立していく事が出来る。そうした繋がりが多い環境は、障がいを抱える人たちにとって生きやすさと直結していくはずです。
「”助けて””手伝って”を言える場がたくさんある環境」「気にかけてくれる人がたくさんいる環境」があるって素敵な事ですよね。
竹内
子どもの事を事細かに書いたものを残しておく
前述した3つの事
- 生活資金
- 生活場所
- つながり
これらを、データーや紙・ノートもしくは両方に書き残しておきましょう。残し方は様々ですが、皆さんはエンディングノートと言うものをご存知ですか?
エンディングノートは障害のあるお子さんをお持ちのご家庭に限らず、全ての方々に役立つものなので少し紹介しておきたいと思います。
高桑
エンディングノート
エンディングノートとは、自分に万が一のことが起こった時に備えて、あらかじめ周りの人に伝えたい事を書き残しておくノートの事です。
竹内
エンディングノートには、万が一のことがあった時の延命措置の事や医療の事、財産や葬儀、介護などあらゆる事を書き残しておくことで残された家族や親族の辛い決断の負担が軽減されます。
親が急にいなくなってしまえば、残された障がいある子は国や自治体の支援により生きてはけますが適切な支援を受ける為には情報が必要です。
それと同じ様に、障がいのある子の為のものを書き残しておきましょう。
- 住所や出生等の基本情報
- 好きなもの、嫌いなもの
- 支援方法、コミュニケーションの取り方
- 薬やケア
- 遺産の事
そうしたものがあれば、支援者に子どもの情報を詳しく伝えることができます。
障がい者の子を抱える親のエンディングノートについては以下で詳しく解説しています。
親亡き後の、自立に向けて生きていく
ひとは皆、親亡き後の自立に向けて生きています。
それは、障がいの有無にかかわらずです。でも、人によって「自立」の在り方って変わってくる。
自分の稼ぎで自分で暮らしてい事だけが自立じゃない。
障がいを抱える人にとっては、「辛い」「苦しい」が言えないのにも関わらず、なんとか衣食住を提供されて生きていることを目的とする事を「自立」と呼ぶわけではありません。
「こういう生き方がしてみたい」「こんな事をしてみたい」「ここは自分の力でやってみたい」と自分の意志を主張できることも、彼らにとっては自立じゃないかなあと思うんです。
コミュニケーションの取り辛さや、気持ちの出し方に不自由があり「その人がどう考えているのか」が置いてけぼりになる事が多いのが障がいですが、親亡き後に「この子達がどう生きたいのか」に注目してくれる人が増えるように頑張る事も大切ですよね。
まとめ:【親亡き後の障害者】「私が死んだら」を考えて今あなたができる事
親は子供よりも先に他界してしまうものです。
しかし、親亡き後の我が子の暮らしを少しでもよくするものは今からでも作り上げていく事が出来ます。
ひとりで考えていると思い悩んだり、壁にぶつかる事もあるでしょう。だから関わる人や支援全体で考えていけたらいいですよね。


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竹内
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