『特定贈与信託』とは何?|仕組みをわかりやすく解説!


記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦

記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦
障がいを持つ子の親は、いつか自分が働けなくなったら、自分が死んでしまったら我が子はどうなるのか…と心配になることがあるかと思います。そんな方向けに、生涯にわたって障害を持つ方へ定期的に金銭を交付する信託商品があります。それが特定贈与信託です。
しかし、特定贈与信託とはなんでしょうか。普通の商業銀行には行ってもなかなか信託銀行には足を運ぶ機会はなくあまり耳にしませんよね。ここでは、障がいを持つ子の親や親族向けに、次のことをご紹介しています。
- 特定贈与信託とは
- 特定贈与信託が受けられる障がい者とは
- 特定贈与信託の仕組み
- 特定贈与信託の贈与税
- 障がい者が亡くなった場合
- 特定贈与信託における委託者と受益者の関係性
- 特定贈与信託で贈与できるもの
- 特定贈与信託は途中解約できるのか
- 特定贈与信託の注意点
- 特定贈与信託契約に必要なもの
少しでも特定贈与信託に興味がある方はぜひご参照ください。
特定贈与信託とは
どんな商品なのか解説していきますね。
障がいを持つ子どもの親は、自分にもしものことがあったとき、我が子の生活はどうなるのだろうか…と不安になることがあるかと思います。経済的な心配もありますよね。
障がいを持つ子どもの生活のために、親族が信託銀行に財産を預け、その財産を管理、運用して障がいを持つ子へ定期的に金銭を交付する制度が特定贈与信託です。
障がいを持つ子どもの親にもしものことがあっても、信託銀行が財産を管理しているため、生涯にわたって子供へ金銭を交付することが可能です。
贈与を受けられる障がい者とは
特定贈与信託で贈与を受けられる障がい者は、特定障害者に該当する方です。
特定障害者とは次に該当する方のことをいいます。
- 特別障害者(重度の心身障がい者)
- 中程度の知的障がい者
- 障害等級2級、3級の精神障がい者
参照:障害者等級
特別障害者という聞きなれない言葉が出てきました。特定障害者と名前が似ていますので、混同しないようご注意ください。特別障害者とは、重度の心身障がい者のことで、具体的には次に該当する方のことです。
- 障害等級1級、2級の方
- 精神障害者保険福祉手帳1級の方
- 重度の知的障がい者と判定された方(療育手帳にAと記載されている方)
- いつも病床にいて、複雑な介護を受けなければいけない方
特定贈与信託の仕組み
さて、ここからは特定贈与信託の仕組みについてご紹介していきます。
1.特定障害者の子を持つ両親など親族が、信託銀行で契約を結ぶ
まずは信託銀行などに行って、信託契約を結びたい旨の相談をしに行きましょう。契約をしたら、障がいを持つ方の親など契約者は、「委託者」、信託銀行が「受託者」、障がいを持つ子が「受益者」となります。
契約をした障がいを持つ子の親など親族 | 委託者 |
信託銀行 | 受託者 |
特定障害者 | 受益者 |
2.「障害者非課税信託申告書」を提出
贈与を受ける受益者、つまり障がいのある方は、非課税措置を受けるために必要な書類である「障害者非課税信託申告書」を提出します。直接税務署に提出する必要はなく、信託銀行を経由して出します。行員から指示がありますので、従ってください。
3.信託銀行が信託された財産を管理、運用する
信託銀行が財産を管理、運用して、あらかじめ指示された方法で特定障害者に定期的に生活費や医療費を交付していきます。
この「定期的に」ということも重要です。もしものために必要なお金だからと、ドンと一括でもらっても、使いすぎてしまうこともありますよね…。一度に多額の金銭をもらう場合は、管理もしにくくなります。このようなことがないように、特定贈与信託は、定期的に必要な分のお金を交付するのが特徴です。
こちらの記事でも詳しく紹介しています→【障害者の親亡きあとのお金の残し方】特定贈与信託のメリットとデメリット
信託とは
何度か登場した信託という言葉。こちらの意味を簡単にご紹介していきます。
信託(しんたく)とは、信頼できる人に託(たく)して、自分があらかじめ決めた目的に沿って、誰かのために管理、運用してもらうことです。
ここで重要なことは、「誰かのために」ということ。
通常、銀行にお金を預けると利息がつくため、増えますよね。このように未来の自分のためにお金を預けています。しかし、信託では、自分以外のために信託銀行に管理してもらうことができるのです。特定贈与信託であれば、特定障害者の子どもなど身内の将来の生活のために、お金を託します。
特定贈与信託|贈与税はかかるのか
さて、特定贈与信託契約をすると、障がいのある子が、生活費や医療費として一定額の金銭を受け取ることになります。特定贈与信託は「贈与」となりますが、こちらは贈与税が課税されるのでしょうか。
- 特別障害者の場合は、6,000万円までが非課税
- 特別障害者以外の場合は、3,0000万円までが非課税
贈与税とは、贈与によって財産が移動した際に、その財産に対して課される税金のことをいいます。非課税上限額には大きな差がありますので、障害者等級を確認して、特別障害者に当てはまるかどうか、よく確認しておく必要があります。
特定贈与信託|受益者(障がいを持つ方)が亡くなった場合は
特定贈与信託の受託者、つまり障がいを持つ方が亡くなった場合はどうなるのでしょうか。
残余財産分は、相続人、受遺者に交付されます。受遺者(じゅいしゃ)とは、遺言を通じて、財産を受け取ることができる人のこと。
障害を持つ方に子どもなど相続する人がいない可能性が高い場合などでは、あらかじめ、ボランティア団体や障がい者団体、福祉施設を指定して、残った財産を寄付することも可能です。障がいを持つ方の未来のためにお金を託すことができます。
特定贈与信託|親子など親族ではないと契約できないの?
さて、ここまで、障がいを持つ子の将来を心配する親を想定してご紹介してきました。
特定贈与信託契約をする委託者と、金銭を交付される障がい者である受益者は親子でないといけないのでしょうか。
結論から申し上げると、委託者と受託者の関係は特に問われません。
親子はもちろんですが、親族以外の方でも契約することが可能です。
特定贈与信託|贈与できるものは金銭だけ?
特定贈与信託で贈与できるものは、下記のものです。
- 金銭
- 有価証券
- 不動産
金銭的に価値のあるものが贈与の対象となります。
特定贈与信託|途中解約はできるのか
特定贈与信託は、贈与を受ける障がいのある方が亡くなる日に終了することになっています。そのため、信託期間を変更することはできません。
障がい者が亡くなった場合は、そこで契約終了となります。しかし、すでにご紹介したように、事前に指定することで余ったお金をボランティア団体や福祉施設などに寄付することも可能。
特定贈与信託|注意点
特定贈与信託をお考えの方に注意していただきたい項目をまとめていきます。
特定贈与信託には手数料がかかる
障がいを持つ方の将来の生活費、医療費などのために、あらかじめ契約することができる特定贈与信託。とても便利な商品ですよね。しかし、こちらには手数料がかかりますので、ご注意ください。
手数料(信託報酬)は信託銀行に支払います。
お金を託しているのに、なぜ? と思われるかもしれませんが、預かった財産の管理、運用をするための手間賃だとお考えください。
手数料の相場は、信託財産額の1.5%から3.3%です。あまり多くない額のように感じるかもしれませんが、特定贈与信託の申込み金額は1,000万円からと設定されていることが多いです。
1,000万円の場合、15万円~33万円が手数料として差し引かれます。15万円と33万円では大きな額の差ですよね…。
特定贈与信託自体は、非課税ですが、手数料はかかりますので、手数料の差でも信託銀行を選んでみましょう。
障害者手帳の更新
障害者手帳の更新は基本的に必要ありませんが、障がい者の状況に変化があった場合は再認定が必要な場合もありますので、医師に相談してみてください。
精神障害者保健福祉手帳は2年ごとに更新が必要です。期限が切れていないか、近くないかもよくチェックしておきましょう。
療育手帳の期限は自治体によって違いますが、2年や5年で再判定が必要になることが多いです。期限が切れていないか見ておいてくださいね。
特定贈与信託を申し込むために必要なもの
特定贈与信託を申し込みために必要なものは次のものになります。
- 印鑑
- 障害者非課税信託申告書
- 障害者等級がわかる証明書(障害者手帳など)
- 住民票
- 身分証
障害者非課税申告書はこちらからダウンロードが可能です→障害者非課税信託申告書
わかる箇所は事前に記入しておくことをおすすめします。信託銀行に相談に行く際は、予約をしておくとスムーズですよ。店舗にリーフレットなどもありますので、貰っておきましょう。
まとめ:『特定贈与信託』とは何?|仕組みをわかりやすく解説!
特定贈与信託とは、契約をすれば障がいを持つ方が亡くなるまで生活費や医療費などに使える金銭を定期的に交付する制度です。一括で金銭を交付されるわけではないため、生活費の管理がしやすいことが魅力。
親子関係でなくても、契約は可能です。
障がいを持つ方が亡くなる日まで契約が続きますので、途中解約はできません。特定贈与信託には、手数料もかかりますので、あらかじめいくつかの信託銀行を比較しておき、後悔のないように契約してくださいね。

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