遠距離介護に悩んだら親の呼び寄せる?同居?近居?メリットやデメリットは?


記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦

記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦
内閣府の調査によると、1980(昭和55)年には3世代世帯の割合が多く、全体の半数ほどを占めていました。ところが2017(平成29)年には夫婦のみの世帯が3割近くとなっており、1人で暮らす世帯と合計すると、半数以上となっています。(参考:内閣府『令和元年版高齢社会白書』)
このように仕事や家庭の事情で、高齢の親と離れて暮らすケースは、年々増える傾向にあります。
家族それぞれの事情はあるものの、親と離れて暮らすことに不安を覚える方も少なくないはずです。親に介護が必要な状態であるならなおさらです。
とはいえ、今暮らす土地から離れて暮らすのは難しく、親の住む実家に帰るには交通費も必要です。そこで、自分たち住んでいる土地に呼び寄せ、同居するもしくは近距離に住んでもらうという方法を選ぶケースもあります。
実際に親を呼び寄せるまでのステップや具体的な方法を見ていきましょう。
遠方で暮らす親が心配なら呼び寄せるのも一手
最近の高齢者は年齢を感じさせない方も多く、元気でアクティブなシニアは珍しくありません。親世代が健康で自分たちの生活を楽しんでいるなら、別居して遠方に暮らしても問題はないでしょう。ただ、高齢になると急に元気がなくなったり、心身が弱ったりする可能性も高くなります。心配なく暮らしていた親世代が、急に要介護状態になった時、どうすればいいのか戸惑う方も多いのです。
また夫婦のどちらかが入院するなど、父か母のどちらかが1人暮らさなければならない場合も心配です。
子ども世代の拠点は都市部など故郷とは別のところにありますから、頻繁に帰省できません。加えて現状をリセットし、地元にUターンするのも困難でしょう。
その場合、自分たちの住むエリアに親たちを呼び寄せ、同居するか近くに住まわせるという方法を選択するケースも増えています。子どもたちは自分たちの生活を変える必要がありませんし、なおかつ、親孝行もできる方法であるからです。
呼び寄せ介護のメリットとデメリット
遠距離介護ではなく親を呼び寄せて介護をする決意をするなら、以下のようなメリットとデメリットがあることを理解しておかなくてはなりません。
【メリット】
- 同居や近居のため、心身の小さな変化を見逃さない
- 緊急時にスピーディな対応が可能
- 遠方から通う時にかかる時間や費用が不要になる
- 介護する子ども側の生活や仕事を変えなくてもいい、介護離職のリスクを減らせる
- 親と子双方に安心感が生まれる
【デメリット】
- 高齢の親が新しい環境になじめない
- 認知症などの症状が出ている場合は、環境の変化に混乱、場合によってはより症状が進んでしまうケースもある
- 子世代は日中、仕事などで忙しいため、常に側にはいられない。親は新天地で孤独に過ごすことになり、遠距離介護と変わらない
- 同居の場合は特に、利用できるサービスや施設入居のハードルが上がってしまう
- 所得を基準とした介護サービスを受ける場合、親を同一世帯とすることで費用増になる可能性も
- 子ども側が同居介護に慣れず、ストレスを抱えてしまう
遠距離介護から同居、近居を提案、呼び寄せる際のポイント5点
遠距離介護から親を呼び寄せる際に気をつけたいポイントをまとめてみました。
1.親と子の暮らし方、生活スタイルの差異を認めあえるよう話し合っておく
親には親、子どもには子どもの生活があります。食事の時間や内容、掃除の頻度や洗濯の方法まで生活スタイルをお互いに知ることからスタートします。
同居する場合は、生活スタイルの違いから言い争いになるケースも少なくありません。世代も生活習慣も異なる人間がいきなり同居して生活をともにするのですから、ある程度は「別世帯」とみなし、お互い鑑賞せずに、割り切ることが大切です。
親が愛用していた生活用品を使う、親専用の道具として新調するなど、ある程度の線引きを心がけます。特に認知症など症状がある親なら、以前と同じようなインテリの部屋を作るなど環境を変えない工夫が欠かせません。
介護に関しては、ケアマネージャーなど介護のプロに、同居・近居前から相談しておくといいでしょう。
2.役割を担ってもらい、新しい人間関係構築をサポート
呼び寄せた親は新たな土地で新しい人間関係を構築していかなくてはなりません。若い時とは異なり、積極的に人間関係を構築できるようなエネルギーが乏しくなっているはずです。親が呼び寄せ先になじめるように、サポートをしてあげると上手く可能性が出てきます。
自宅でも客人扱いせず、食事の用意をしてもらう、掃除をメインに任せる等など、役割を担ってもらうといいですね。活動していると孤独感などネガティブな考えも浮かびにくくなるはず。可能であれば、町内や地域の活動などをお願いしてみても◎。やりがいを持つことが、日々の活力にもつながります。
3.同居に限らず近居や施設入居も考えてみる
親子だからいつも一緒に暮らすのが最善とは限りません。
遠距離介護のように、少し離れた関係がベストの場合も多いものです。同居の他、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)といった施設入居も含め至近距離に住んでもらうという選択肢も残しておくのがおすすめです。
4.親だけでなく同居家族の気持ちにも向き合う
子ども世代は家族がいるなら、配偶者や子どもたちにも親と暮らすことについてよく話し合い、理解を深めておく必要があります。自分にとっては大事な親であっても、配偶者にとっては義理の親です。思いや感覚に温度差があっても当然です。
さらに、兄弟姉妹がいるのなら、親を呼び寄せることや介護方針などを確かめておかなければ、トラブルにつながる場合もあります。
5.バリアフリーなど住居環境を整える
高齢者が暮らしやすいよう、場合よってはリフォームなどを施さなければならないかもしれません。
まとめ:遠距離介護に悩んだら親の呼び寄せる?同居?近居?メリットやデメリットは?
老後をどのように過ごしていきたいのか、お金の問題はどうするのかなど、親が元気なうちに話し合っておきましょう。
そして実際に親を呼び寄せる前に、期間を決めて1度同居を試してみることをおすすめします。どういった問題があり、解消可能なのかをシミュレーションしておきましょう。
その上で本当に同居するのが親と子、双方にとってハッピーなのか、今一度再考してみるのは大切なことです。
「一緒に住まないのは親不孝」という考えを満たすためだけのため、親を呼ぶ寄せるのが目的になってしまっていませんか?親の本心や希望を本当に理解しているでしょうか。遠距離介護もやり方次第では十分改善の余地があり、デイサービス、訪問リハビリ、訪問看護を上手く利用すれば続けていくこともできます。
また一緒に暮らす家族の理解がなければ、双方にとっていい結果とはなりません。
家族の事情は千差万別で、それぞれの幸せの形は異なります。無理なく続けられるよう、柔軟に考えていく姿勢を大切に、ベストな方法を探していきましょう。


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