同居しながら介護と育児の両立はできる?ダブルケアのメリットとデメリットとは


記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦

記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦
「出産の予定があるけれど、親の介護が必要になった」
「子どもがまだ小さいけれど、親が心配だから同居して介護をしようか悩んでいる」
このような状況から、同居をしてダブルケアをするべきか検討してみるものの、不安な部分も大きいですよね。
- 本当に介護と育児を両立できるのだろうか?
- どれだけ負担が増えるのだろう?
同居でダブルケアをやっていくのは、相当の覚悟が必要です。そして自分だけで負担を抱え込まず周りの手を借りたり、さまざまなサービスをうまく利用していくのが乗り切るコツです。
この記事では、同居でダブルケアをする場合のメリットやデメリット、利用してほしいさまざまなサービスなどについてお伝えしています。
ぜひ最後まで読んでくださいね。
同居で介護と育児を両立させることは可能?
親と同居をしながらダブルケアをする場合、次のような問題が発生してしまいます。
- 時間の余裕がなくなる
- 経済的な負担が大きくなる
- 精神的な負担が大きくなる
これらの問題がクリアできるかどうか、家族で話し合いよく検討してみましょう。
時間の余裕がなくなる
ダブルケアの一番の問題は、介護に時間を取られるようになるため、子どもと関われる時間が少なくなってしまうことです。
実際、同居でのダブルケアでは「育児よりも介護に時間がかかってしまっている」と悩んでいる人が多いのです。寂しい思いから子どもの様子が変わってしまうこともあります。
同居を始める前に、育児の時間をどのようにして取るかについても、夫婦でよく話をしておきましょう。
経済的な負担が大きくなる
同居でのダブルケアは、次のような理由から経済的な負担が大きくなります。
- 介護費用がかかる
- 収入が減る
育児と介護をしながら外に働きに出ることは、とても大変なことです。親の分の食事の世話、掃除や洗濯などの家事も増えますから、時間や体力がいくらあっても足りないという状況になるでしょう。
その結果、介護離職をしたり働く時間を減らすことによって収入が減ってしまいます。しかし、育児や介護費用で出費はかさみますから、経済的な負担は大きくなるのです。
なるべく介護離職をしたり収入を減らさないですむよう、介護サービスを積極的に利用しましょう。
精神的な負担が大きくなる
ダブルケアでは、親の健康と子どもの健康、どちらも自分の手で管理をしないといけないという精神的負担が発生します。
時間や金銭的な負担も加わるので、ストレスは大きくなります。
さらに、介護や育児の担い手は女性が多く、家族の中でも負担が集中する傾向にあります。1人でがんばりすぎてしまわず、夫や親戚、介護サービスなどさまざまな人の力を借りることが大切です。
同居でダブルケアをするメリット
同居でのダブルケアは大変ですが、メリットもしっかりとありますよ。
- 親の家まで通う時間がいらない
- 親の健康状態を把握できる
- 訪問ヘルパーと顔を合わせる機会が増える
- 親の資産を管理できる
- 孫との交流ができる
ひとつずつ見ていきましょう。
親の家まで通う時間がいらない
別居していると、親の様子を見に行くために度々実家へ通わなければなりませんね。片道は数十分だとしても、それが積み重なれば膨大な時間になります。
同居をすれば、親の家に通うための時間は必要なくなりますね。
親の健康状態を把握できる
同居をして毎日顔を合わせていれば、「今日はいつもと少し様子が違う」など、親の小さな変化に気づきやすくなります。
体調が悪そうなときはすぐに対処できますし、親にとっても安心感があるでしょう。
ホームヘルパーと顔を合わせる機会が増える
訪問介護サービスを利用する場合、同居していればホームヘルパーさんと顔を合わせる機会が増えます。
こちらの気づきを伝えたり、親に対してどんな対応をしているのか観察したりできるのは大きなメリットですね。
親の資産を管理できる
近年、ひとり暮らしの高齢者を狙った詐欺などが多く報告されるようになりました。詐欺ではなくても、知らないうちに訪問販売などで高額な商品を売りつけられていることもあります。
同居しているとこういったことに目が届きやすくなり、親の財産を守れます。
孫との交流ができる
高齢の親にとって、かわいい孫との交流はとても刺激になります。毎日の生活に張りが出て、生きる活力となるはずです。
子どもにとっても、弱者をいたわる気持ちを学べる良い機会になるでしょう。
同居でダブルケアをするデメリット
同居でダブルケアをしていくのなら、当然デメリットもあります。
- 洗濯、掃除など家事が増える
- 育児の時間が少なくなる
- 祖父母と孫の関係が難しいことがある
- 家の中が狭くなる
- 行動に制限が出てくる
- 家に人の出入りがある
同居で介護をするだけでも大変なことですが、その上に育児も重なりますので相当な覚悟が必要です。
本当に同居をしても大丈夫なのか、デメリットについて考えてみましょう。
家事が増える
家族の分だけでも大変な家事ですが、さらに親の分が加わります。
親が排せつに失敗すれば、その都度洗濯や掃除をする必要が出てきます。若者と高齢者では食べたいものが合わず、別メニューを準備する必要もあるかもしれませんね。
今以上に夫婦でしっかりと分担を決めたり、積極的に家事代行サービスを使ったりしましょう。
育児の時間が少なくなる
介護にかける時間が増える分、子どもと関わる時間は減ってしまいます。その結果、子どもが寂しい思いをしていたり、甘えたい気持ちをぐっと抑えていたりすることもあるのです。
育児が終わってから後悔しないよう、育児の時間をどのように確保するか考えてくださいね。
祖父母と孫の関係が難しいことがある
子どもと関わる時間が減ることにより、子どもとあなたの親の関係が難しくなってしまうこともあります。
子どもからしてみると、今まで自分にしか向いていなかった親の関心が祖父母にも向けられるようになるため、嫉妬してしまうのです。その嫉妬心から、祖父母を邪魔者扱いしてしまうこともあります。
また、あなたの親に認知症やせん妄による暴力や暴言がある場合も注意が必要です。その暴力や暴言は、子どもに向けられてしまう可能性もあるからです。病気だから仕方ないと分かっていても、やはり子どもは傷ついてしまうでしょう。
家の中が狭くなる
物理的に、人が1人増えるだけで家の中はかなり狭くなります。家が今までより狭くなるのは、それだけでストレスになりますよね。
介護ベッドや親の荷物を家の中に置いたらどのように感じるか、よくシミュレーションしてください。
行動に制限が出てくる
介護が必要な親を、家に長時間1人にしておくのは気が引けてしまうのではないでしょうか。
そうすると、家族で出かけたり旅行するのが難しくなります。場合によっては、子どもの園行事や学校行事に参加できないこともあるでしょう。介護があるとはいえ、子どもとの思い出作りができないのは悲しいことですよね。
短期入所できるショートステイを利用するなどして、家族で過ごす時間も大切にしてください。
家に人の出入りがある
同居で介護をするときには、積極的に介護サービスを利用することをおすすめします。
ただ、介護サービスを利用することのデメリットも考えなくてはなりません。
訪問介護などを利用する場合は、自宅に他人が出入りすることになります。自分がいない間に他人が家に訪問することに抵抗がある人は、それがストレスになる可能性があります。
訪問介護ではなくデイサービスを利用するなど、別の方法を探してみましょう。
同居でのダブルケアはたくさんの人に協力してもらおう
介護は自分ひとりで頑張ろうとすると、いつかは無理が来てしまいます。ダブルケアでは育児の負担も加わりますので、なおさら頑張りすぎてはいけません。
同居でダブルケアを行うときは、さまざまなサービスを利用したり、協力をお願いしたりして、なるべく負担を減らすことを考えましょう。
介護サービスを利用する
1番に検討してほしいのが、介護サービスの利用です。
要介護認定を受けていれば介護保険が適用され、原則は1割負担(介護される人の年収によっては2~3割負担)で介護サービスを受けられます。
介護サービス | サービス内容 |
訪問介護 | ホームヘルパーに自宅まで訪問してもらい、介護サービスを受けられる |
デイサービス(通所サービス) | 日帰りで介護施設に通い、食事や入浴などの介護サービスを受けられる
預かり時間は日中のみ |
ショートステイ(短期入所サービス) | 食事や入浴の補助を受けられる
早朝や夜間も預かってもらえる |
すぐに利用する予定がなくても、自宅近くの介護施設について情報を集めておきましょう。
介護休業や介護休暇を取得する
要介護状態の家族を介護するための、介護休業や介護休暇を取得できる制度(育児・介護休業法)があります。
このような制度もしっかりと活用して、介護離職を防ぎましょう。
介護休業
介護休業は、親などの介護が必要になったさい、介護と仕事を両立できる体制を整えるために取得できます。
対象となる労働者 | 入社1年以上である
取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと |
利用期間・回数 | 対象家族1人につき3回まで、通算93日まで |
経済的支援 | 休業開始時賃金月額の67%の介護休業給付金が支給される(雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす場合) |
介護休暇
介護休暇は、次のような場面で取得できます。
- 通院の付添い
- 介護サービスの手続き代行
- ケアマネージャーなどとの打ち合わせ
また介護休暇は、有給休暇とは別に取得できます。
対象となる労働者利用回数 | 入社6か月以上である
1週間の所定労働日数が3日以上である |
利用回数 | 対象家族が1人:年5日まで
対象家族が2人以上:年10日まで |
取得単位 | 一日または時間単位 |
経済的支援 | 有給か無休かは、会社の定めによる |
保育所、幼稚園、ベビーシッターを利用する
同居でダブルケアをするとなると、子どもを家で見ながら同時に介護も、というのは難しくなるでしょう。
介護者が精神的にゆとりをもつために、保育所、幼稚園、ベビ-シッターを利用することも考えましょう。
保育所は同居家族の介護を理由に子どもを預けることができますし、幼稚園なら2歳児から受け入れをしているところもあります。なるべく自宅で子どもを見たいということであれば、ベビーシッターを雇うという選択肢もありますね。
家事代行サービスを利用する
親と同居を始めると家事の量が増えてしまい、介護だけでなく家事にも時間と労力が必要になります。しかし本来ならば家事の時間は最小限にして、子どもとの時間を優先したいですよね。
そこで、利用を検討したいのが家事代行サービス。
家事代行サービスは、掃除、洗濯、調理、買い物など、家事のあらゆることをお願いできますよ。
全国対応している家事代行サービス
産前産後の支援事業を利用する
妊娠中または出産後にダブルケアが始まることになる場合、赤ちゃんのお世話と介護を両立できるのか、自分の体力がもつのかなど、不安は大きいですよね。そこで利用したいのが産前産後の支援事業です。
支援内容は自治体によって多少異りますが、産前や産後にヘルパーを派遣し、育児や家事の援助を行うというものです。自分で直接ヘルパーを雇うよりも安価な金額で依頼できる自治体がほとんどです。
積極的に宣伝をしていない自治体がほとんどなので、こちらから問い合わせをしてみたり、「産前産後 支援事業 〇〇(自治体名)」などで検索してみましょう。
きょうだいや親戚も頼る
「みんな忙しいのだから、自分がやらなきゃ」と気負うのではなく、積極的に他のきょうだいや親戚にも相談をしましょう。
親の通院に付き添ってもらったり、子どもを遊びに連れ出してもらったりと、お願いできることはいろいろあります。遠方に住んでいたら直接的な労力を借りることは難しいですが、様子を気にしてもらえるだけで気が楽になりますよ。
同居で介護と育児を両立するのは難しいと感じたら
同居でのダブルケアについてメリットやデメリットなど、さまざまなことをお伝えしてきました。
いろいろなことを検討した上で、「やっぱり同居でダブルケアは難しいかも」と判断する方もおられることでしょう。
とはいえ、介護が必要なのに親だけで生活をさせるのは不安がありますよね。そういった場合は、見守りサービスを利用したり、施設への入所を検討しましょう。
見守りサービスを利用する
一般社団法人終活協議会では、見守りサービスを行っています。
こういったサービスを利用して、別居での介護を続ける方法もありますよ。
介護施設への入所を検討する
介護施設への入所は、親を見放してしまった気がしてためらいを感じてしまうかもしれませんが、メリットがたくさんあります。
- 親子の適度な距離を保てる
- 共倒れの心配がない
- 育児を優先できる
- 手厚い介護サービスを受けられる
また、介護施設への入所は待ち期間がある施設が多数です。すぐに入所するつもりはなくても、早めに情報を集めておきましょう。
まとめ:同居しながら介護と育児の両立はできる?ダブルケアのメリットとデメリットとは
同居でダブルケアをすると、さまざまなメリットやデメリットがあることが分かりましたね。
介護者の負担が大きく、子どもにも影響があることから、家族や親族でよく話し合うことが大切です。
使えるサービスはしっかりと使い、後悔のない介護生活を送れるようにしてくださいね。



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竹内
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