介護帰国もあり得る?海外在住者が考えておくべき親の老後


記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦

記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦
海外での就職や国際結婚を機に、海外に移住する日本人は増加傾向にありますが、海外在住者が、必ず直面することになるのが、親の介護の問題です。
自身が若いうちは、親もまだまだ元気なため、介護と言われてもピンとこないかもしれません。しかし、自分が歳をとるにつれ、自分の両親も年老いていくという事実には、誰もが気づかされることになります。
- 帰国して介護するのか?
- 呼び寄せるのか?
- それとも誰かに任せるか?
そんな難しい判断をいつかは下さないとならない時がくるのです。
そこで、今回は、海外在住者なら、直面することを避けられない親の老後の介護について考えてみたいと思います。
記事のもくじ
海外在住を決めたなら、介護についての覚悟は必要
ネットが普及したことで、海外に住んでいても、日本にいる人とのコミュニケーションは、格段に便利に安くなりました。インターネットでビデオ通話が手軽にできる時代になり、遠く海外からでも、毎日親の顔を見て話すことができます。
しかし、海外からできることは、どうしても限られてしまいます。
「転んで怪我をしてしまって…」
「最近、ちょっと耳が聞こえにくくなってきたみたい」
そんな親の言葉や、何気ない日常会話から、親の老いが進んでいることを感じ、不安になってしまう海外在住者も多いのではないでしょうか?
しかし、本当に大変なのは、身体的な介護が必要になった場合です。
日本に住んでいて、たとえ同居していたとしても、親の介護はたやすいことではありません。働きながらだの介護や、子育てしながらの介護であればなおさらで、その上、海外在住となれば、さらに難しい選択を迫られることになります。
でも、海外に住むと決めたのは自分です。
海外で暮らすということは、日本で住んでいる人と同じように親のお世話ができないということです。その覚悟は必要です。
海外からでは親に会いに行くだけで、お金も時間もかかります。日本に帰国して親の介護をするとなれば、そのしわ寄せは、海外での職場や家族にいくことになるでしょう。きっぱりと割り切ってできることをするのか、親の介護を自分の人生よりも優先するのか、もしものとき、自分はどうするのか、どうしたいのか、親が元気なうちからしっかりと考えておくことが大切になってきます。
海外在住者が介護が必要になった親のためにできること
親は年老いていき、いつかは介護が必要なときがくるものです。
そうなったらどうするのか、どういう選択肢が考えられるのか、海外在住者ができることをみてみましょう。
兄弟姉妹に任せる
海外在住の場合、親の介護は、日本にいる兄弟姉妹や親戚に任せるしかありません。
海外で仕事をしていて、それが家計を支える収入である場合、仕事を辞めて帰国するという選択肢はあり得ないでしょう。せいぜい休暇が取れたときに、日本に一時帰国し、その間だけ介護するくらい。ただそれだと、日本に残っている人に任せっきりにしているという後ろめたさはどうしてもぬぐいきれないかもしれません。
海外からでもできることといえば、経済的に許す範囲で、「お金の支援」を申し出ること、あるいは、親の遺産がある場合は、介護をしてくれた兄弟に多く遺産を渡すということです。
介護と遺産相続については、あとあと揉める可能性もある問題ですので、親が元気なうちから兄弟や親戚と誰がどのような役割を担うのか、遺産相続にそれをどう反映するのかなどを話し合っておく必要があるでしょう。
介護のために帰国する
一人っ子世帯が増えている現在、介護を任せられる兄弟姉妹や親戚がいないというケースも少なくはないでしょう。在宅で自分一人でできる範囲の介護であれば、介護のために帰国する選択肢もあります。
ただし、仕事をしている場合は、介護が長期化することもあるため、離職しなければならないかもしれません。女性の場合は、自分だけ、あるいは自分と子どもだけ一時帰国、男性の場合は、家族全員で一時帰国するというケースが多いでしょうか。
中には、介護をきっかけに日本に引き上げる家族もいます。
自分たちの生活が大きく変わる選択であるため、決断は容易ではありません。家族や職場に負担をかける選択となりますから、職場や家族と話し合って理解してもらうことも必要です。
介護は期間限定ですが、介護が終わってからも自分の人生は続いていくということも頭の片隅におき、後悔のない決断をしたいものです。
介護施設を利用する
共働き世帯が増えている現在、日本に兄弟や親戚がいても、完全に在宅介護する時間的余裕があるとは限りません。加えて、自分自身、介護のために帰国することが現実的に不可能なケースもあり得ます。
そんな場合には、介護サービスや介護施設を利用するなど、お金で解決するしかありません。どの程度の介護が必要かによって、どんな介護サービスや介護施設を選ぶかは変わってきますが、現実的な問題として、お金をかければ、その分手厚い介護が期待できることは確かです。
両親がある程度の年齢になったら、一時帰国を利用して施設の見学などをしておくと、もしものときに慌てずにすみます。また、施設の入居にかかる金額もあらかじめわかっていれば、早くからお金を準備を始めることができます。
親を海外に呼び寄せる
海外在住の方の中には、親を自分が住んでいる海外に呼び寄せて介護する方もいます。
自身の生活環境を変えずに親の介護もできる方法ではありますが、さまざまな問題もあります。
ビザの問題
海外で暮らすにはビザが必要ですが、国によっては親のビザの申請がなかなか通らないこともあり得ます。
親のストレスの問題
高齢者にとって、慣れない海外で暮らすこと自体がストレスを抱える可能性もあります。また、海外の食事や気候が親にとって快適かどうかも考慮する必要があります。さらには、医療水準、医療費、医療保険については、あらかじめ調べておきたいポイントです。
ご自身が住んでいる国によって状況は異なりますが、実際問題として、親を海外に呼び寄せるのはそう簡単ではないようです。
日本の親のために日頃から海外在住者がしておくべきこと
海外からできることには、限りがあります。だからこそ、日頃から、親の老後に備えておくことが重要になってきます。
ここでは、日本の親の老後に備えて、海外在住者が日頃からしておくべき4つのことをご紹介しましょう。
親とコニュニケーションをこまめにとる
ネットを利用したビデオ通話であれば電話料金を気にする必要もありませんし、顔を見ておしゃべりができます。親御さんがスマホの操作に慣れてないようであれば、帰国した際にセッティングしてあげましょう。
こまめにコミュニケーションをとっていれば、親の変化にも気づきやすくなります。
日本にいる兄弟や親戚との話し合いをもつ
親が倒れてから右往左往しないためにも、一時帰国の際には、親の老後の介護について兄弟姉妹や親戚と話し合っておきましょう。
海外在住者は、何かあってもすぐに駆けつけることができません。もし入院することになったら、入院の手続きなど誰がするのかなど、具体的なことまで話し合い、協力してもらえるようにしておくことが大切です。海外にいながらできることといえば、やはりお金の支援になりますので、実際の世話ができない分、経済面でサポートする体制は作っておきたいもの。
また、日本にサポートしてくれる兄弟や親戚がいない場合は、帰国の際に、地域の介護サービスセンターや介護施設の見学や相談をしておくとよいでしょう。
海外で一緒に暮らす家族と話し合っておく
日本の両親の介護が必要になった場合、自分はどうしたいのか、海外で一緒に暮らす家族と話し合っておくことも大切です。もしも、あなたが介護のために日本に帰国するということになれば、家族の毎日の暮らしに大きな影響を与えます。
親の介護には、海外で一緒にくらす家族の理解と協力は欠かせません。
いつでも日本に行ける準備だけはしておく
緊急時のために、いつでも動ける準備はしておきたいものです。
パスポートやビザは早めに更新し、日本で滞在するために必要な円の準備など最低限のことは済ませておきましょう。
まとめ 罪悪感を持つよりも、最大限できることをしよう
海外在住者の多くが、親の介護を十分にできないことから、親をほったらかしにしている罪悪感や介護を兄弟や他の人に押し付けている罪悪感を感じているようです。けれど、罪悪感を持ったところで現状が変わるわけではありません。そのとき自分にできる最大限のことに意識とパワーを注ぐことの方が大切なのではないでしょうか?
介護は一生続くわけではないけれど、後悔は一生続くかもしれません。
どんな選択をしたとしても、完全にすべての人を満足させることはできないものです。
だとすれば、自分自身にとって、どのような方法をとるのがよいのか、悔いの残らない決断をすることが大切なのではないでしょうか?
「終活の相談窓口」では終活に関する様々なサポートを行なっております。
竹内
- エンディングノートの書き方サポート
- 終活に関するご相談(無料)
- おひとりさまの終活サポート
終活に関するご相談は以下からお願いいたします。
無料で受けられる「終活ガイド初級」で、終活の基礎知識を学びませんか?
エンディングノートの細かな部分をしっかり理解し、”『エンディングノート』を通じて豊かな人生のお手伝いをする”やり甲斐、使命感を感じられる仕事『エンディングノート認定講師講座』については以下をご覧ください。