老人性うつとは|その症状は認知症?もしかしたら老人性うつかもしれません


記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦

記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦
高齢者の方が、物忘れが多くなったり、反応が鈍くなったりすると、まず疑われるのが認知症です。しかし、認知症だと思い込んでいたら老人性うつだった、というケースも意外に多いのです。
初期の老人性うつの症状は認知症と間違われることが多く、周りの家族も気づかないまま、症状を悪化させてしまう危険があります。
うつ病の治療と認知症の治療は異なっていますので、適切な対応を早期に取ることが重要です。
ここでは、なんだか元気がない、気分のムラが以前より激しい、物忘れすることが多くなったなど、介護している相手の様子がおかしいと思われている方に向けて、老人性うつの特徴や、原因、認知症との違いなどをまとめてみました。
老人性うつとは
うつ病は、子供から高齢者まで、あらゆる年代の人がかかりうる病気です。
「老人性うつ」というのは、正式な病名ではありませんが、65歳以上の高齢者のうつ病をそう呼ぶことがあります。
うつ病になる原因やきっかけはさまざまなで、高齢になってからうつ病になることは決して珍しいことではありません。むしろ、加齢による体力の低下や、さまざまな体の不調や環境の変化から、うつ病になりやすいと考えられます。
にもかかわらず、高齢者のうつの初期症状は、認知症と思われてそのまま放置されることがよくあります。
うつ病は放っておくと、知らないうちに重症化し、最悪の場合、自殺につながることもありますので、認知症と決め付けずに、初期の段階で、うつ病の可能性を疑い、適切な対処を取ることが大切になってきます。
高齢者がうつ病になりやすい理由
高齢者の場合、そうでない人と比べて、環境的にも、心理的にもうつ病の誘因が多いと言われます。退職や、身近な人との死別、身体能力の低下など、多くの喪失を体験する年齢であるからです。
具体的な高齢者のうつ病の主な要因には、以下のようなライフイベントによるものと、慢性的なストレスによるものがあります。
高齢者のうつ病の主な誘因
- 配偶者や近親者の死別
- 離婚など家族との人間関係の問題
- 自分や近親者が命に関わるような病気にかかる
- 子供との同居や入所による環境の変化
- 経済的な危機や不安
- 身体機能の低下(以前ほど体が動かない、体の各所に痛みがあるなど)
- 退職などによる社会的役割の喪失や社会的孤立
- 高齢者の同居者がいる場合は、その家族の介護の問題
また高齢になるほど、慢性の病気を抱えている人が増えるものですが、それらも、うつをひきおこす原因となります。
うつ病を引き起こしやすい慢性の病気
- 脳血管障害
- パーキンソン病
- クッシング病
- 心筋梗塞
- がん
- HIV感染症
- 喘息など
さらに高齢者は、合併症を患っていることが多く、複数の医者にかかり、複数の薬を処方されていることがあります。飲んだことを忘れて、過剰摂取するケースも見られます。
薬の中には、うつを誘発するものがありますので、薬の服用が原因のうつ病にも注意する必要があります。
高齢者のうつ病の特徴
老人性うつ発見が遅れがちなのは、高齢者のうつ病の症状が、一般的なうつ病の症状とは異なっていることが原因です。
実は、高齢者の場合、典型的なうつ病の症状がある人は半数にも満たないと言われます。また、一部の症状だけが強く現れるなどの不規則性も見られます。
典型的なうつの症状
典型的なうつ病では、日常生活に支障がでるほどの強い気分の落ち込みがほぼ1日中あり、下記のような症状を複数、2週間以上継続して示すのが普通です。
- 抑うつ気分
- 興味や喜びの喪失
- 何事もやる気がおきない
- 思考力、集中力の低下
- 罪悪感
- 焦燥感
- 食欲低下
- 不眠などの睡眠障害
- 疲労感や倦怠感
- 息苦しさや動悸など
高齢者に多いうつの症状
一方、老人性うつの場合は、以下のような症状であるケースがよく見られます。
一見うつに見えない
高齢者の場合、うつであっても、悲哀の訴えが比較的少ないことから、気分の落ち込みやうつ思考が目立ちにくいのが特徴です。
一部の症状だけが強く見られることがある
典型的なうつの場合、抑うつ気分、興味や喜びの喪失が見られると同時に、上記にあげたような症状が4~5つ程度同時に見られるのが普通ですが、高齢者の場合、一部の症状だけが特に強く現れることがあります。
体の不調を訴えることが多い
頭痛やめまい、吐き気、食欲不振、しびれ、不眠など体の不調を訴えるケースが多く見られます。
うつが原因の体調不良は、検査では特に異常が見つからないことも多いので、原因不明の体調不良が続き、意欲の低下や記憶力の低下が見られた場合は、うつの可能性を疑ってみるべきでしょう。
上記以外の気になる症状
それ以外にでよく見られる症状としては、物忘れすることが多くなる、落ち着きがなくなる、趣味に興味を示さなくなる、不安や焦燥感を訴えるなどがあります。
うつ病と認知症の違い
高齢者のうつ病のなかでも、本人がもの忘れを強く訴える場合は、認知症のように見えることがあります。
両者を見分けることは難しいのですが、それぞれ対処法が異なりますので、早い段階で、両者を識別することが大切になります。
老人性うつと認知の症状の違い
老人性うつ | 認知症 |
突然発症し、進行が早い |
ゆっくりと進行する |
初期症状として、抑うつ症状や体の不調を訴えることが多い |
初期症状として、記憶障害や性格の変化が見られる |
もの忘れすることが増えたと強く訴える |
もの忘れしていても、自分では訴えない |
自責の念が強く、申し訳ないとよく言う |
自責感は薄く、逆にいじめられているなどと言ったり、自分の大変さをアピールする |
食欲がなくなる |
食欲はある |
社交性がなくなる |
表面的な社交性はある |
問いかけに対する受け答えはしっかりしている |
問いかけに対して見当違いの答えが返ってくる |
回復する可能性がある |
進行を遅らせることは可能だが、回復する可能性は低い |
老人性うつを予防するためにできること
老人性うつの大きな要因は、喪失感や孤独感によるものです。
そのため、老人性うつの予防には、積極的に社会や人と関わることを心がけることが効果的です。それに加え、適度な運動とバランスの取れた食事を心がけましょう。
本人が自発的にそのような行動を取らない場合は、社会や周りの人との関わりが途絶えないように、家族や周りの人が気にかけて、サポートしてあげましょう。
老人性うつ予防のために心がけたいこと
- 自分が楽しめる趣味を持つ
- 定年退職後に別の仕事を始めてみる
- 稽古事など、新しいことを始めてみる
- 話し相手となる仲間をつくる
- ボランティアなど地域の活動に積極的に参加してみる
- 屋外の散歩、軽い体操など適度な運動を心がける
- バランスの取れた食生活を心がける
介護する人が気をつけるポイント
介護している相手が老人性うつと思われる場合に、周りの家族や介護者はどのような対応すれば良いのでしょうか?
介護する人が気をつけるべきポイントをまとめてみました。
- 本人の訴えを認めて共感してあげる(否定や反論をしない)
- 心配しすぎない。いつもと同じように接する
- 励ましの言葉はプレッシャーになるので、励まさない
- 急かさずにゆっくりと本人のペースで話をさせる
- 重大な決定は先延ばしにしておく
- 攻撃されても、非難されても、うつ病がさせていることと割り切り、見守る
うつ病を患っている高齢者の介護は、介護者にとっても大きな負担となり、介護者がうつ病になるリスクも高まります。
時には、要介護者と距離をおいたり、自分一人で過ごす時間を持つなどし、意識的に気分転換を図ることも大切です。介護者が精神的に病んでしまうと、介護どころではなくなりますので、ご自身の心身の健康を第一に考え、燃え尽きる前に、周りの人やケアマネジャーなどに相談しましょう。
まとめ:老人性うつとは|その症状は認知症?もしかしたら老人性うつかもしれません
老人性うつは、典型的なうつ病の症状とは異なる特異的な症状を現すことも多く、発見が遅くなることがあります。
- 認知症だと思っていたら、実は老人性うつだった
- 原因不明の体調不良が続いていたが、実は老人性うつだった
というようなケースもよく見受けられます。
うつ病は放置しておくと、急激に症状が悪化することが多く、命を落としかねない深刻な病気です。介護している方の様子がいつもと違うと思ったら、早めに周りの人や医師に相談するようにしましょう。
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