「老後破産」とは何?原因や防ぐ方法について解説


記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦

記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦
老後破産
(読み方:ろうごはさん)
- 老後破産とは
- 老後破産の原因
- 老後破産を防ぐ方法
について解説します。
記事のもくじ
老後破産とは
老後破産とは、老後に国から支給される年金と貯蓄で生活できなくなり、家計が赤字になった状態をいいます。
現代の日本では、現役時代の収入にかかわらず、誰でも老後破産する可能性があります。
実際、2019年6月に金融庁のワーキング・グループが公表した報告書は、年金だけで生活することは難しいとしました。具体的には、夫65才以上、妻60才以上の高齢夫婦無職世帯で、20年で1,300万円、30年で2,000万円の老後資金を用意する必要があると報告されています(参考:「高齢社会における資産形成・管理」|金融庁)。マスコミなどで大きな話題になったので、記憶されてらっしゃる方もいらっしゃるかも知れません。
具体例として、定年まで毎月コツコツ貯蓄をしてある程度の蓄えがあった方や、比較的恵まれた額の退職金を受け取った方、定年前の収入が平均以上であった方でも、老後破産となったケースがあります。
厚生労働省が公表した「生活保護の被保護者調査(平成30年度確定値)」を見ると、生活保護を受給している世帯全体(1,637,422件)のうち、50%以上にあたる882,022件が高齢者世帯であることが分かります。(参考:生活保護の被保護者調査(平成30年度確定値)|厚生労働省)
また、1人暮らしの方の場合、女性よりも男性の方が老後破産しやすい傾向にあるようです。それは、男性の方がより人の世話になりたくない、国に頼るなんて恥である、自分でなんとかしなくてはと思いが強く、ギリギリになってやっと相談機関に話をするケースが多いためです。
けれど、ある専門家は本来、老後破産は存在しないはずと言います。理由は、65才以上で健康上の理由などで就労が困難な場合には、生活保護を受給する権利があるからです。生活保護を受給するためには自宅の売却が前提との情報がありますが、資産価値が一定の基準を下回っていて、生活に利用している持ち家であれば、売却の必要はありません。(参考:「老後破産」200万人の衝撃 「破産する人」「しない人」ここが分かれ目だった|週刊現代)
老後破産の原因
老後破産の原因として考えられるのは、次の6つです。それぞれ、詳しく見ていきましょう。
①生活水準が下げられない
勤務先の定年後に、再雇用制度や継続雇用制度を使って働き続ける人は多くいらっしゃいます。定年前の職場で働き続ける方でも、契約形態が変わり、契約社員や業務委託等に変更になるケースが大半を占めるはずです。ほとんど場合で、契約社員や業務委託の給与は、定年前と比べると8割から5割程度まで収入が低下するのではないでしょうか。収入が下がったら、それに応じて支出を見直し、収入と支出のバランスを取る必要があります。
収入が下がったあとも、定年前の収入と同等の支出を続ければ、高額の退職金や貯金があった場合でも、短期間のうちに残高が不足することは容易に想像できるでしょう。
②住宅ローン
晩婚化が進む現代では結婚後に住宅を購入し、住宅ローンが定年後まで残っているケースが目立つようになっています。
住宅ローンは基本的に定年前の収入をベースに組まれているため、収入が下がってからの定年後の家計を住宅ローンが圧迫するパターンが増えているのです。
③子ども関係
②の住宅ローンと同様に、晩婚化によって子どもの教育費の支払いが定年後にも続くケースも増えています。
2013年に第一子の平均出産年齢が30代になっています(参考:平成28年 厚生労働省 人口動態統計月報年計(概数))が、仮に40才で出産した場合、子どもが20才になった年に親は60才になる計算です。大学進学等で22才まで教育費がかかると考えると、子どもの教育費が老後に影響することが理解できるでしょう。
また、経済的に自立していない子どもや、離婚後に実家に戻ってくるケースも増加しており、子どもが成人してからも、子どもにまつわる出費が親の家計に影響する例が少なくありません。
④健康問題
高齢になると、病気やケガ、介護など、健康問題を理由とする出費も大きくなる可能性が高くなります。病気になると働くことができなくなり、収入の減少につながります。入院や手術などが必要になれば、その分の出費が必要になるでしょう。
病気と同様に、いつ介護が必要になるか予想することはできません。介護費用も内容に応じて額が変わり、在宅ではなく介護施設や老人ホームへ入居する場合の入居費用は高額であることが多いです。

⑤資金の計画不足
退職金が支払われた場合にも、慣れない投資によって短期間で大幅に額を減らしてしまう方が少なくありません。
また、退職金で住宅ローンを完済する予定を立てる方もいらっしゃいますが、退職金の使い道については定年後の生活資金についてしっかり計画を立てることをおすすめします。
⑥離婚
老後破産をする人には、離婚が原因の場合もあります。
一般的に、1人で生活するよりも2人で生活する方が経済的なコストは抑えられるため、離婚後、経済的に困窮する可能性は高いと言えるでしょう。
老後破産を防ぐ方法
老後破産を防ぐためには、どのような方法があるでしょうか。ここでは、3つの方法をご紹介します。
①健康を保つ
言うまでもないことですが、健康はすべての基本です。体調が思わしくないために仕事を続けることが困難になると、収入が途絶えることにもつながります。
病気やケガをすれば、収入がなくなるだけでなく、治療や手術などの医療費への出費も必要となります。さらに介護が必要になると、介護費用がプラスされることになるため、健康で仕事を続けた場合に比べると、家計の収支バランスが大きく崩れることは明らかです。
心身の健康を保つためには、次の3つを楽しむことがおすすめです。
- 定期的に運動する
- 人とコミュニケーションを図る
- 熱中できる趣味を持つ
また、要介護状態になることを未然に防ぐ、介護状態が悪化しないよう予防することも大切です。以下では介護予防についての記事を集めていますので、あわせてご覧ください。
②収入を把握し、増やす
定年後に受け取れる年金の受給見込み額は、毎年郵送される「ねんきん定期便」に記載されています。
定年後に受け取れる年金の額と、働き続ける場合に得られる収入の額、その他の収入があれば合計額を計算して、定年後の具体的な収入をシミュレーションしましょう。
具体的な収入額を把握して、不足がある場合には収入を増やす手立てを考えます。例えば
- 「つみたてNISA」
- 「iDeco」
- 貯蓄機能のある保険
- 高利回りの保険への加入
を検討してはいかがでしょうか。毎月、小さな額でも積み立て運用すれば、数年後にはまとまった額の資産にすることができます。
トータルの収入額を増やすことにはなりませんが、年金の繰り下げ受給も検討の余地があります。繰り下げ受給は、一般的に65才でスタートする年金受給開始時期を繰り下げて、66才から70才で受給を開始することです。
繰り下げた年月分の年金額を、短くなった年数で受け取れますので、月々の受け取り額がアップすることになります。
この他、長期的に収入を増やす方法としては、国民年金基金や財形貯蓄制度、銀行の積立式定期預金などがあります。状況や事情に応じて、検討なさってください。
③資金計画を立てる
健康を維持し、収入を増やすための準備をしながらも、定年前と同等の収入を得られるのでなければ、収入に応じた家計の整理が必要です。
具体的に支出をおさえる場合には、住居費や通信料、保険料などの固定費と呼ばれる部分を減らすのがポイントです。住居費をおさえる方法としては、2つの方法があります。
リバースモーゲージ
聞き慣れない言葉かも知れませんが、リバースモーゲージは、シニアをターゲットにした制度です。持ち家に住みながら、家を担保に融資が受けられる特徴があります。対象になるのは、基本的に一戸建てです。
メリットは、自宅に住み続けながらお金が手に入る点、デメリットは推定相続人全員の同意が必要な点です。
リースバック
リースバックも、なじみのない言葉に感じられるかも知れません。
リースバックとは、不動産会社などに自宅を買い取ってもらい、売却先から自宅だった家をリースする形で同じ場所に住み続けられる仕組みです。自宅を売却するため、まとまった金額が手に入る点と、引越しをせず、住み慣れた家に暮らし続けられる点がメリットです。
住宅ローンが残っていれば、返済費用に充てられますし、老後資金にもなります。また、固定資産税の支払いが不要になる点も見逃せません。
まとめ
今回は、老後破産とは何か、老後破産する原因、対策ついて解説しました。
老後破産は、誰でも経験する可能性がありますが、「健康を保つ、収入を把握し増やす、資金計画を立てる」ことで回避することができます。
老後のお金について不安に感じる方は少なくありません。しっかり向き合って準備をすることで少しでも不安を解消していただければと思います。
老後破産について、わからないことやご相談がございましたら、お問い合わせください。

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