「形見分け」とは何?言葉の意味や目的、タイミングや注意点について解説


記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦

記事監修者:一般社団法人終活協議会代表理事:竹内義彦
形見分け
(読み方:かたみわけ)
- 形見分けとは
- 形見分けと遺品整理の違い、遺産分割について
- 形見分けのタイミング
- 形見分けの対象となるもの
- 形見分けの注意点
について解説します。
形見分けとは
形見分けとは、故人の愛用品や思い出の品を、故人と親しかった方や縁のあった方で分け合うことです。「袖(そで)分け」、「裾(すそ)分け」、「垢(あか)つき」、「お手汚し」、「しょうぶ分け」とも言われ、「片身分け」と書くこともあります。
形見分けの歴史は古く、平安時代に書かれた『栄華物語』にも「あはれなる御形見の衣は」との記述があり、これは亡くなった人の衣類について語られています。
形見分けは本来、故人の霊魂を継承する、または「あやかる」ことを目的とされていたことから、霊魂がこもりやすいとされた衣類(着物)が主な対象とされていました。着物の中でも特に、袖の部分が重要視されたことが、「袖分け」の言葉が生まれた理由のようです。
また着物は手に入れるのが困難で、貴重なものであったことから、親から子へ、目上の人から目下の人へ受け継がれるものとされていました。
現代における形見分けの目的は、故人のゆかりの品物を手元に置くことで、故人の存在を思い出し、折に触れて偲んでもらうことです。エンディングノートや遺書で形見分けについて、故人の意思が残されている場合には、故人の意思に従いましょう。
形見分けを受け取った場合にはお礼は不要です。その方を偲び、いつまでも忘れずにいることがいちばんのお礼となるでしょう。
形見分けと遺品整理の違い、遺産分割について
形見分けと似た言葉に「遺品整理」があります。ここで、形見分けと、遺品整理の違いについて、確認しておきましょう。
形見 | 個人の愛用品や思い出の詰まったもの、思い入れの深いもの |
遺品 | 個人が残した全ての持ち物 |
つまり、形見分けは故人を偲ぶ思い出の品を、親しかった友人知人がもらい受けること、遺品整理は故人の持ち物を整理、処分することをいいます。
また、形見分けの際に「遺産分割」が話題になることも多いでしょう。遺産分割は、何を誰が相続するのか、分配方法を決めることをいいます。
形見分けのタイミング
形見分けは、遺品整理、遺産分割との関係で言うと順番的には以下のようになります。
遺品整理
遺産分割
形見分け
遺産相続に関しては、相続人であると分かってから3ヶ月以内に行うと決められている(参考:民法第915条|WIKI BOOKS)ため、形見分けのタイミングも、遺産相続の進み具合に影響を受けることがあるでしょう。
一般的な形見分けのタイミングとしては、忌が明けた後がよいとされています。
宗教ごとの忌が明ける時期は次のとおりです。
忌が明ける時期:仏教では
仏教では、四十九日の法要後に忌が明けると考えられています。
四十九日になると、この世をさまよっていた故人の霊が極楽浄土に行くと考えられているためです。このことから、形見分けは四十九日のあとが適しているとされます。
忌が明ける時期:神道では
神道では、五十日際(ごじゅうにちさい)で忌明けすると言われています。
神道では忌が明けるまでは穢れがあるとされるため、形見分けも五十日際が済んでから行うのがよいでしょう。
忌が明ける時期:キリスト教では
キリスト教には「忌」の概念や、形見分けの概念がありません。
ですが、日本人の場合であれば、三十日目の召天日(命日)後の、追悼ミサ(カトリック)、記念式(プロテスタント)の後に、形見分けをするケースが多いようです。
形見分けの対象となるもの
形見分けの対象になるのは、具体的に次のようなものがあります。
1.着物や洋服
2.コレクション
3.時計
4.本
5.筆記用具
6.数珠
それぞれ、詳しくご説明しましょう。
1.着物や衣類、アクセサリーなど
形見分けでは、着物や衣類、アクセサリーといったファッション関係の小物がメジャーです。故人の面影を思い出しやすく、日常生活に取り入れやすいことが理由でしょう。
旅行で着ていた服や、記念の小物など、故人との思い出の深い物が形見の品になることも少なくないようです。
また、引き取り手がいない状態の良い衣類などは、慈善団体に寄付すると先方にも喜ばれますし、故人の供養にもなるでしょう。
2.コレクション
鉄道模型や食器類、宝石、絵画、釣り具、カメラなど、コレクションアイテムには、さまざまなものがあります。中には市場価値が高く、財産とみなされる物もありますので、鑑定を頼む必要がある場合もあるでしょう。
コレクションアイテムは、興味がある人の手に渡るのが故人にとっても、譲り受ける側にとっても一番です。友人知人に同じ趣味を持つ方がいらっしゃらない場合には、関連する研究機関や団体にコンタクトを取ると喜ばれます。
3.時計
時計もまた、形見として受け継がれることの多いアイテムです。
毎日のように身につけるので、故人の面影を感じやすく、故人を偲ぶのに最適な物と言えるでしょう。
4.本
故人の愛読書があれば、その本もまた故人を偲ぶのに適した物となります。
本好きの方であれば特に、故人との思い出や考えに触れられる、この上ない形見となるかもしれません。
5.筆記用具
万年筆などの筆記用具も、故人が最後まで使っていた物として、形見分けする品物としては代表的な物です。
ただし、お手入れが必要であったり、手間がかかる場合などは、相手の方によく確認してお渡しする配慮があるといいでしょう。
6.数珠
仏教では、故人の棺に数珠を入れてお送りしますが、複数の数珠があれば子どもが形見として譲り受けるケースも少なくありません。これは、数珠が仏教の世界で重要な仏具の一つであるためです。
形見分けの注意点
最後に、形見分けの際に注意すべき点を6つ、ご紹介します。
1.相続税と贈与税
コレクションや貴金属類、絵画など、5万円を超える資産価値がある遺品は、相続税の対象となります。
また、相続人以外の方が、1年間で110万円を超える物の贈与を受けた場合には、贈与税の対象となります。(参考:もっと知りたい税のこと|令和元年10月財務省)
2.法定相続人全員の同意
形見分けをする際には、形見分けしようとする物に対して、法定相続人全員の同意があると安心です。
これは、形見分けしたあとで起こる可能性のあるトラブルを防ぐためです。
3.目上の方には贈らない
形見分けは本来、親から子どもへ、貴重な物を受け継ぐ行為だった経緯があるため、目上の方に形見分けをするのはマナー違反にあたるとされています。
ただ、現代では価値観が多様化していますので、あまりこだわらなくても良いと考える方もいらっしゃいます。
4.状態の良い物をお手入れしてから
衣類やコレクション、筆記用具などは、状態の良い物を選び、お渡しする前にはお手入れをしてきれいな状態にしておきましょう。
5.相手の意思を尊重する
形見分けは、受け取りたい方もいらっしゃれば、そうでない方もいらっしゃいます。お渡しする前に、相手の方の意思をよく確認して、断られた場合には、その意思に従うべきでしょう。
6.包装はしない
形見分けは贈答品ではないので、包装はしません。気になるようであれば、半紙や奉書紙などの白い紙に包んで、仏教では「遺品」、神道やキリスト教では「偲ぶ草」と表書きしてお渡しします。
直接手渡しするのが丁寧ですが、宅配便などで送ることも可能です。
まとめ
形見分けについて、意味や歴史、遺品整理や遺産分割との違い、形見分けのタイミングや形見分けの対象となる物、注意点を解説しました。
形見分けの目的は、故人を偲ぶことです。この記事が、故人にとっても残された方にとっても良い形見分けをするヒントになれば幸いです。

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